住宅やマンションの浴室は、ユニットバスが主流です。短期間で施工できるうえ、防水性や断熱性にも優れているため、施主からのリフォーム相談時に採用されるケースが多くあります。ただし、費用や工期、製品グレードによって提案内容が左右されるため、業者側も適切に判断しなければなりません。
この記事では、ユニットバス工事にかかる費用の目安や内訳、価格変動の要因を整理し、提案時に活用できる事例も紹介します。施主のニーズに応じた最適なプランを立てるための参考情報としてご活用ください。
ユニットバスの交換やリフォーム工事にかかる費用は、物件の条件や工事内容によって異なります。グレードやサイズ、施工方法の違いにより、価格帯に大きな幅があります。一般的には、マンション・戸建てを問わず、50万円から150万円前後が1つの目安です。
ただし、オプションの有無や現場の状況によって、予算を超えるケースも少なくありません。施主に合った工事を提案するために、事前に相場感を把握しておきましょう。
以下に、費用帯ごとに、工事の詳細と工期の目安を整理しました。リフォームの内容によって費用と工期には大きな違いが生まれます。
実際の現場では、オプションや構造条件による追加費用が発生する場合もあります。
ユニットバスのリフォームは本体価格のほかに、解体・設置・配管など多岐にわたる工事費が発生します。提案前に現場の構造や設備状況を確認し、必要となる工程を見極めることが重要です。施主に予算感をつかんでもらうためにも、内訳と目安費用を明確にしておきましょう。以下に、工事項目ごとの相場費用をまとめました。
とくに注意が必要なのは、在来浴室からのリフォームや築年数の古い物件です。このようなケースでは、配管の劣化や下地の傷みが進んでおり、補修・交換の手間が加わる可能性があります。
ユニットバスの工事費は、複数の要素が重なり高額な提案となることも少なくありません。ここでは、とくに費用に影響を及ぼしやすい4つのポイントを紹介します。
浴室の種類
浴室の素材
ユニットバスの大きさ
オプションの有無
どのような影響があるのか見ていきましょう。
浴室は、「在来工法」「ユニットバス」「ハーフユニットバス」の3種類で、それぞれ構造や施工のしやすさが異なります。以下に、詳細をまとめました。
それぞれの特徴を理解したうえで、建物の構造や使い勝手に合わせて提案しましょう。
使用する素材によって製品の質感や耐久性が異なり、コストに違いが生じます。以下に、おもに使われる素材と価格感をまとめました。
施工後の満足度を高めるためには、素材選定の段階でメンテナンス性や清掃のしやすさ、使用頻度なども加味しておくとよいでしょう。
ユニットバスには、便利で快適な機能を追加できるオプションが多数用意されています。ただし、電気工事や設備工事を要する場合が多く、費用が大きく変動します。以下に、代表的なオプションと追加費用の目安をまとめました。
なお、オプションの中には後付けが難しいものもあります。初回提案時に、施主のライフスタイルや要望を踏まえて必要性を見極めることが重要です。
ユニットバスのリフォームは総額が高くなりやすいため、施主の予算内に収める工夫が求められます。ここでは、コストを抑えながらも顧客満足度の高い提案につなげられるポイントを4つまとめました。
補助金を活用する
グレードを下げる
複数社を比較する
工事業者に製品を選んでもらう
それぞれ見ていきましょう。
ユニットバスのリフォームは、条件に合致すれば行政から補助金や助成金を受けられる可能性があります。とくに「高断熱浴槽の導入」や「手すりの設置」「段差の解消」など、省エネやバリアフリーを目的とした工事は支援対象になりやすい傾向です。
たとえば、浴室の温熱環境を改善する断熱浴槽や、滑りにくい床材の導入は「既存住宅の省エネ診断・省エネ設計への補助(東京都)」として補助対象となる場合があります。また、要介護認定を受けた家族がいる場合は、介護保険の住宅改修費(最大20万円まで)の支給が受けられるケースもあります。
さらに、地域によっては「地元企業の活用」を条件に補助金を出す自治体もあり、省エネ・バリアフリーに該当しない工事でも助成されることも。補助金情報を事前に把握しておけば、施主へのコストカットの提案や信頼構築にもつながります。
見た目が似ていても、浴槽の材質や水栓のグレード、収納棚の構成などによって20万~30万円の価格差が出ることがあります。
「魔法びん浴槽」や「床ワイパー洗浄」などの高機能オプションは魅力的ですが、すべての案件で必須とは限りません。コスト重視の案件では、標準装備に絞ったベーシックモデルの提案により、施工費用を抑えられます。
さらに、メーカーによっては型落ちモデルや在庫限りの商品を割安で提供している場合もあります。施主のニーズやライフスタイルをヒアリングしながら、必要十分な機能に絞ってグレードを選定することが重要です。
同じユニットバス製品でも、仕入れ先によって価格や納期、サービス内容はさまざまです。代理店の取扱実績や仕入れルート、キャンペーンの有無によって、同一グレードの商品でも10万円以上の価格差が生じるケースも少なくありません。
そのため、仕入れを1社に限定せず、複数のメーカーや販売代理店の見積もりを取り寄せましょう。製品価格や納品スケジュール、アフターサービスの内容を総合的に比較することが重要です。とくに価格が「一式表示」されている場合は、設備ごとの単価を細かく確認し、費用の内訳を把握しておくと安心です。
また、比較検討の段階で複数社にあたることで、値引き提案や納期調整など柔軟な対応を引き出しやすくなります。仕入れ先の対応力や保証条件も含めたメリットの見極めが、提案の幅を広げるポイントです。
ユニットバスの本体選定を施主に一任させるのではなく、業者側で提案することで、結果的に費用を抑えられるケースがあります。業者はメーカーや問屋との仕入れルートがあり、型落ち品やキャンペーン品などの製品を把握しているためです。
また、現場の収まりや搬入経路を考慮し、施工効率のよいモデルの選定により、不要な手間や追加工事を避けられます。とくに間取りや構造が複雑な現場では、「この型は入らない」「施工が難しい」などの判断が事前にでき、全体の工期短縮にもつながるでしょう。
そのため、「すべてを施主が決める」のではなく、「ご予算や必要な機能を伺ったうえで、最適な製品をご提案します」といったスタンスで進めるのも効果的です。
施主から「この予算でどのような工事ができるのか?」といった相談を受けることも少なくありません。具体的なイメージを持ってもらうためには、相場ごとの施工事例を提示するのが効果的です。ここでは、以下4つの価格帯に分けて、リフォーム事例を紹介します。
50万円未満
100万円未満
150万円未満
150万円以上
それぞれの予算に応じた工事内容や選ばれているユニットバスの仕様を確認し、最適なリフォームプランを提案する参考にしてください。
ユニットバスのサイズや仕様を大きく変えず、最低限の工事可能な価格帯です。ここでは、築年数が経過したワンルームマンションの水回り改修事例を紹介します。
築年数の経過に伴い3点ユニットを撤去し、浴室とトイレを完全に分離したセパレートタイプへ変更しました。以下は、実際の施工内容です。
壁はホワイトベースにグレーの木目調アクセントパネルを配し、シンプルながらも洗練された印象に仕上げました。
この価格帯では、既存のユニットバスを最新モデルに更新する工事が中心です。ここでは、築年数の経過した戸建て住宅の事例を紹介します。
浴室を対象に、ユニットバス本体を最新仕様に交換しました。床は乾きやすさと滑りにくさを重視し、壁は温かみのある木目調を採用。浴槽・壁・床すべてに汚れが付きにくい素材を使用し、日々の手入れが楽になるよう工夫されています。
以下に、施工内容をまとめました。
保温性に優れた浴槽のおかげでお湯が冷めにくくなり、光熱費の節約にも貢献しています。短期間の施工ながら、機能・快適性・デザイン性を高めたバランスの取れたリフォーム事例です。
カラーや素材の選定、収納や開放感を重視した設計が実現できる予算感です。ここでは、マンション浴室の上質なリフォーム事例を紹介します。
マンションの浴室を対象に、落ち着いたトーンでまとめた高級感ある空間作りを実施しました。入口に透明ガラスのドアを採用することで、限られたスペースでも広がりを感じさせる仕上がりに。
また、可動棚の位置や数を生活スタイルに合わせて細かく調整し、実用性にも配慮されています。施工内容は、以下のとおりです。
快適さと見た目の美しさを両立した、満足度の高いリフォーム事例です。
浴室の拡張や間取り変更を含む本格的なリノベーションが可能な価格帯です。ここでは、戸建て住宅の大規模改修事例を紹介します。
冬場の結露対策をきっかけに、浴室を中心に内装全体のリノベーションを実施。冷えにくい床材や汚れが付きにくい壁パネルなど、清掃性と快適性を両立した設備を採用しました。内装は北欧ナチュラルを基調に、ブルーのアクセントで施主の好みを反映。以下は実際の施工内容です。
機能・快適性・デザインのすべてを追求した、理想的なハイグレード浴室リフォームの好例といえるでしょう。
工期はすべての現場で同じわけではなく、現場条件や施主の要望によって変動します。業者として正確なスケジュールを組むには、日数に影響を与える要素を事前に把握しておくことが重要です。ここでは、工期に影響を及ぼす5つのポイントを整理しました。
リフォームの規模
既存浴室の構造
職人の技術力
季節・天候
既存浴室の老朽具合
それぞれ見ていきましょう。
工期の長さにもっとも大きく関係するのは、リフォームの規模です。部分的な交換で済む小規模リフォームであれば、多くの場合は1週間以内に完了します。
一方、床や壁、天井などすべてを入れ替える全面改修の場合、2週間から3週間ほどかかる場合もあります。施主が希望する仕上がり次第で作業範囲が異なるため、事前に予算と日数のバランスを計画しましょう。
壁の中に断熱材が入っていなかったり、床に傾きや腐食があったりすると、補強工事が必要になるケースがあります。電気や水道の配管が古く、基準を満たしていない場合は交換工事も必要です。
このような状況を現地調査の段階で見落とすと、施工中に追加工事が発生し、工程が延びる原因になります。
技術の高い職人であれば、正確かつ効率的に作業を進められるため、想定より早く工程が完了することもあります。仕上がりの品質にも直結する要素であるため、丁寧な施工を求められる水回り工事ではとくに重要です。
また、段取りをスムーズに進めるためにも、突発的なトラブルや現場の状況変化に対応できる職人を確保することが求められます。自社の人的リソースを適切にアサインし、現場に応じたチーム編成を心がけましょう。
夏場の高温や冬場の寒さ、梅雨の湿気など、環境条件が作業の進行に影響を及ぼすケースは少なくありません。たとえば、接着剤や塗装材は気温や湿度によって乾燥時間が変わるため、予定より時間を要する可能性があります。
とくに防水処理が必要な工程では、天候によって施工タイミングの調整が必要です。事前にスケジュールの余裕をもたせておくと安心でしょう。
配管の腐食や壁材のひび割れ、下地の傷みなどが見つかると、追加作業が発生します。とくに、築年数の経過により劣化している場合は注意が必要です。築20年以上の物件では補修工事が必要になることが多い傾向です。
想定外のスケジュール超過を防ぐためにも、事前に現地調査を徹底しましょう。
改めて、ユニットバス工事の基本的な流れをおさらいしておきましょう。施主からの要望を受け、どのような手順で現場が進行するのかを整理することで、工程管理や説明にも役立ちます。
浴室の種類を確認する
既存浴室を解体し、基礎工事を施す
ユニットバスを組み立てる
順に見ていきましょう。
まず、現在の浴室がユニットバスと在来工法のいずれかを把握します。ユニットバスからの交換なら比較的短期間で済みますが、在来工法の場合は下地の作り直しなど追加工事が必要です。
浴室のサイズや間取りも確認し、新しいユニットバスが問題なく設置できるかをチェックします。
工事の中でもとくに慎重さが求められる工程です。床や壁を取り除いたあとは、排水管や給水管などのインフラも確認し、必要に応じて更新します。
その後、防水処理や床のレベル調整などの基礎工事を施します。この工程が不十分だと、将来的なトラブルにつながるため、施工精度の高さが重要です。
基礎工事が完了したら、いよいよユニットバス本体の設置に移ります。天井・壁・浴槽・ドアなどの各パーツを、あらかじめ工場で成型されたユニットになるよう現場で組み立てていきます。
給排水や電気の接続が終わったあとは、最終的な仕上げと動作確認を行い、引き渡しができたら完了です。
ユニットバスのリフォームは、グレードや間取り、既存の浴室構造によって費用や工期が大きく異なります。あらかじめ工事の流れや費用内訳を把握しておくことで、施主の要望に応じた提案が実現します。
また、施主の満足度を高めるためには、設置する製品や施工内容に加え、空間全体の仕上がりにも目を向けましょう。